藤田 隆治様(ぬくもりワークス保護者会会長)

父親としてできること

先日、愛知県教育大学が「障害児育児における父親の役割」とした報告書を目にしました。
障害児を持った時の父親と母親の受け止め方の違いや、育児への関わり方の特徴などが書かれていましたので、自分自身と照らし合わせながら考えてみました。

まず、我が子が重度障害児だと告知された時の母親の反応は「目の前が真っ暗になった」「一緒に死のうと思った」など悲観的志向が約5割あるのに対し「頑張るしかない」「一生懸命病院に通って少しでも良くなるようにしてもらおう」などの現実に対応しようとする態度を示す父親が8割強だそうです。
この背景には、母親は自分に責任があると考える罪責感や強い母性からくるものであり、父親は障害を受容し乗り越えるというよりも、自分より混乱して取り乱している母親を何とか支えようとする意識からくると書かれています。
現在二十才になる私の娘に知的障害を告知されたのは5才ぐらいだったと思います。言葉の遅れは以前から気になっていましたが、いざ告知を受けた時はやはりショックでした。妻はどう受け止めたかは分かりませんが、私は「何とかしないといけない」という気持ちに掻き立てられていました。紹介された言語訓練の病院にその足で行ったり、寝る前にパズルや迷路ゲームをやったりしました。今思うと私の場合は、自分と妻が思い描いていた家族の姿と違ってしまうことに対する怖さからの行動だったのでしょう。

実際の育児についての報告は次のように書かれています。
母親は先に述べた罪責感から世話役を「当然」として引き受けるのに対し、父親は子供に十分関わらないことに正当性を与えられてきたそうです。父親への期待は「経済的に家族を支える」であり、又、会社においてもまだまだ障害児育児に対する理解度は低く、表に出すことができない父親の環境があると記しています。
現実、ぬくもりワークスの保護者会にしても9割はお母様であり、手をつなぐ親の会でも全てお母様方で運営されています。面識のあるお母様にお父さんの協力状況を聞いた所「仕事があるから」「送迎はやってもらってる」「やれないと思うから」などという言葉が返ってきました。何十年と言う月日の中で自然と分担された役割になったのでしょうから良いも悪いもないことです。

お父様方へ、今お母様方がやられていることを代わりにやることは私を含め無理だと思います。ですが父親は父親が得意とする「仕組みをかえる」「新しいものを作る」「社会をかえる」ことができます。これも大きな育児協力ですので、できる所から一緒に取り組みませんか。